ランニングを楽しむ上で、シューズ選びは非常に重要な要素です。
近年、複数のシューズを使い分ける「ランニングシューズのローテーション」という考え方が広まってきています。
この方法には、怪我の予防、パフォーマンスの向上、シューズの寿命延長など、様々なメリットが期待されています。
本記事では、初心者から上級者まで、全てのランナーに向けて、シューズローテーションのメリット、具体的な方法、そして目標タイム別のシューズ選びまで、詳しく解説します。
多くのランナーが一足のシューズで走り続け、気づかぬうちに怪我のリスクを高め、パフォーマンスの向上を妨げ、さらにはシューズの寿命を縮めているかもしれません。
適切なシューズ選び、そしてシューズローテーションを理解し、あなたのランニングライフをより安全で、より充実したものにしましょう。
1. ランニングシューズローテーションがもたらすメリット
なぜ、ランニングシューズのローテーションが推奨されるのでしょうか?
その理由は、主に4つのメリットがあるからです。
1-1. 怪我予防
ランニングは、着地の度に足に体重の何倍もの負荷がかかるスポーツです。
同じシューズを履き続けると、足や脚への負担が偏り、特定部位に繰り返しストレスがかかり続けることになります。
これが、疲労骨折、腱炎、足底筋膜炎といった怪我のリスクを高める要因となります。
しかし、シューズをローテーションすることで、着地時の衝撃や足の動きに微妙な変化が生じ、負担を分散させることができます。
異なるシューズはそれぞれ異なる歩行パターンと筋肉の動員を生み出すため、様々な筋肉群がバランスよく使われ、特定部位への過度なストレスを軽減できるのです。
実際に、2015年にScandanavian Journal of Medicine and Science in Sportsに掲載された研究では、シューズをローテーションしていたランナーは、そうでないランナーに比べて怪我のリスクが39%低かったという結果が出ています(Malisoux et al., 2015)[1]。
これは、ローテーションが怪我予防に効果的であることを示す、有力な証拠と言えるでしょう。
1-2. パフォーマンス向上
様々なタイプのシューズを履くことは、様々な筋肉を刺激し、筋力バランスの向上に繋がります。
例えば、クッション性の高いシューズは長距離走での疲労を軽減し、軽量で反発性の高いシューズは、スピードトレーニングにおいて、より速く、効率的な走りをサポートしてくれます。
それぞれのシューズの特性を理解し、トレーニング内容に合わせて使い分けることで、より効果的にパフォーマンスを向上させることができます。
1-3. シューズの寿命延長
ランニングシューズのミッドソールは、着地の衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
しかし、同じシューズを毎日使用していると、ミッドソールが圧縮されて本来の機能を失い、劣化していきます。
シューズをローテーションすることで、ミッドソールが元の形状に回復する時間を与えることができます。
これにより、シューズの寿命を延ばし、より長く愛用することが可能となります。
また、汗などによる劣化も軽減され、シューズを衛生的に保つことにも繋がります。
結果として、頻繁にシューズを買い替える必要がなくなり、長期的に見れば経済的ですし、環境への負荷も軽減できます。
1-4. ランニングの多様性
シューズをローテーションすることは、ランニングの楽しみ方を広げることにも繋がります。
シューズを変えることで、走る場所やトレーニング内容に変化をつけやすくなり、マンネリ化を防ぎ、モチベーションを維持しやすくなります。
2. 効果的なランニングシューズローテーションの実践方法
効果的なローテーションを実践するためのポイントを解説します。
2-1. 最低2足、異なるタイプのシューズを組み合わせる
まずは、最低でも2足のシューズを用意しましょう。
クッション性の高いデイリートレーナーと、反発性の高いスピードトレーニング用シューズの組み合わせがおすすめです。
2-2. 連続して同じシューズを履かない
同じシューズを連日履き続けると、ミッドソールが十分に回復せず、劣化を早めてしまいます。
1日ごとにシューズを交換するのが理想的です。
2-3. シューズの走行距離を記録する
シューズの寿命を把握するためには、走行距離を記録することも有効です。
一般的なランニングシューズの交換目安は480〜800km、レース用シューズは400〜480km程度と言われていますが、これはあくまでも目安です。
各メーカーの推奨する交換時期を確認し、自身の走行距離と照らし合わせて判断しましょう。
2-4. 目視と主観で確認するシューズの交換時期
走行距離だけでなく、シューズの状態を目視で確認することも重要です。以下のポイントをチェックし、交換時期の判断材料にしましょう。
目視での確認ポイント:
- ミッドソールのシワ: ミッドソール側面に深いシワが多数入っている場合は、クッション性が低下しているサインです。特に、指で押してみて、簡単にへこんでしまう、または元の形に戻りにくい場合は要注意です。
- アウトソールの摩耗: アウトソールの溝が浅くなったり、特定の部分が極端に摩耗している場合は、グリップ力が低下している可能性があります。特に、母指球やかかと部分の摩耗は、ランニングフォームに影響を与えることもあるため注意が必要です。
- アッパーの破れやほつれ: アッパーに破れやほつれがある場合、足のホールド力が低下し、怪我のリスクが高まります。
- シューズ全体の型崩れ: シューズ全体が型崩れしている場合、特に左右非対称な歪みが見られる場合は、足のアライメントに悪影響を及ぼす可能性があります。
主観的な確認方法:
- クッション性の低下: 以前と比べて、着地時の衝撃が大きく感じられるようになったり、足裏や関節に痛みを感じやすくなった場合は、ミッドソールのクッション性が低下している可能性があります。
- 反発力の低下: 蹴り出しの際に、以前のような反発力が感じられなくなった場合は、ミッドソールの劣化が考えられます。
- 安定感の低下: 走っている最中に、シューズのぐらつきや不安定さを感じるようになった場合は、ミッドソールやアッパーのサポート力が低下している可能性があります。
- 違和感や痛み: これまで感じなかった違和感や痛み、特に膝、足首、すねなどに感じる場合は、シューズの劣化が原因の可能性があります。
これらの項目を総合的に判断し、交換時期を検討しましょう。また、交換時期に不安がある場合は、ランニング専門店などで専門スタッフに相談することをお勧めします。
2-5. 自分の走力、目標、ランニングスタイルに合わせて調整
ローテーションの方法は、ランナーのレベルや目標によって異なります。
初心者はクッション性の高いシューズから始め、上級者は目的に応じて細かく調整しましょう。
3. ミッドソールの劣化と怪我のリスク
ミッドソールは、衝撃を吸収し、足への負担を軽減する重要な役割を担っています。
しかし、使用を続けるうちに徐々に劣化し、その機能が低下。
ミッドソールの劣化がランニングフォームに与える影響については複数の研究で報告されています。
例えば、2009年にMedicine & Science in Sports & Exerciseに掲載された研究では、800km走行したシューズは新品に比べ衝撃吸収能力が低下し、膝関節への負担が増加する可能性が示唆されています(Hennig & Milani, 2009)[2]。
また、別の研究では、ミッドソールの硬度低下がランニングフォームの変化を引き起こす可能性が示唆されています(Kulmala et al., 2018)[3]。
これらの研究は、ミッドソールの劣化がランニングエコノミーの低下や怪我のリスク増加に繋がる可能性を示唆しています。
4. 目標タイム別、最適なシューズローテーション戦略
初心者から上級者まで、目標タイム別に最適なシューズローテーション戦略を紹介します。
- アディダス ランニングシューズチャート
- アシックス ランニングシューズチャート
これらのチャートを参考に、ご自身のレベルに合ったシューズ選びの参考にしてください。
(a) サブ3ランナー (4足ローテーション)
質の高いトレーニングを積むため、4足以上のローテーションを推奨。
- レース用:軽量性、反発性、推進力
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- Adidas Adizero Adios Pro 4:箱根でも区間賞続出の最速シューズ
- 著者おすすめ:
- スピードトレーニング用:軽量性、反発性、グリップ力
- 著者おすすめ:
- Asics Magic Speed 4:性能、耐久性も優れながら、コスパに優れるシューズ
- 著者おすすめ:
- ジョグ用:クッション性、安定性、耐久性
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- Nike Pegasus 41:ジョグからスピードトレーニングまで対応できる万能シューズ、シリーズはどれもおすすめなので値下げがされた旧モデルでもOK
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- リカバリー用:クッション性、快適性
- 著者おすすめ:
- Asics Gel-Nimbus 26:クッション性に優れゆったりとしたランに最適なシューズ
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(b) サブ4ランナー (3足ローテーション):
スピードトレーニングと長距離のペース走に対応できる3足のローテーションが基本。
- レース用:軽量性、反発性
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- Asics S4+YOGIRI:サブ4達成のために作られたシューズ
- 著者おすすめ:
- トレーニング用:クッション性、反発性、耐久性
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- Asics Magic Speed 4:性能、耐久性も優れながら、コスパに優れるシューズ
- 著者おすすめ:
- ジョグ用:クッション性、安定性
- 著者おすすめ:
- Nike Pegasus 41:ジョグからスピードトレーニングまで対応できる万能シューズ、シリーズはどれもおすすめなので値下げがされた旧モデルでもOK
- 著者おすすめ:
(c) サブ5ランナー (2足ローテーション):
無理のないペースでトレーニングを続けることが重要。2足のローテーションで怪我のリスクを軽減。
- デイリートレーナー:クッション性、安定性、耐久性
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- Nike Pegasus 41:ジョグからスピードトレーニングまで対応できる万能シューズ、シリーズはどれもおすすめなので値下げがされた旧モデルでもOK
- 著者おすすめ:
- スピードトレーニング用:軽量性、反発性
- 著者おすすめ:
- Asics Magic Speed 4:性能、耐久性も優れながら、コスパに優れるシューズ
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(d) 初心者ランナー (1~2足):
まずはランニングに慣れることが大切。クッション性が高く、足に優しいシューズを選び、走行距離が増えてきたら2足目を検討しましょう。
- デイリートレーナー:クッション性、安定性
- 著者おすすめ:
- Nike Pegasus 41:ジョグからスピードトレーニングまで対応できる万能シューズ、シリーズはどれもおすすめなので値下げがされた旧モデルでもOK
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5. まとめ
ランニングシューズのローテーションは、怪我を予防し、シューズを長持ちさせるための効果的な戦略です。
初心者から上級者まで、全てのランナーにおすすめです。
自身のレベルや目標に合わせて最適な**ローテーションを実践し、より長く、快適なランニングライフを送りましょう!
脚注:
- Malisoux, L., Ramesh, J., Mann, R., Seil, R., Urhausen, A., & Theisen, D. (2015). Can parallel use of different running shoes decrease running-related injury risk?. *Scandinavian journal of medicine & science in sports*, *25*(1), 110-115.
- Hennig, E. M., & Milani, T. L. (2009). The effects of high mileage running on the cushioning properties of running shoes. *Medicine & Science in Sports & Exercise*, *27*(5), 648-654.
- Kulmala, J. P., Kosonen, J., Nurminen, J., & Avela, J. (2018). Running in worn-out running shoes increases plantar loading in recreational runners. *Journal of Foot and Ankle Research*, *11*(1), 1-8.